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[旅の日記]

ブタペスト Budapest  

 ついに来ましたハンガリーへ。
東欧と言えば、少し前までは社会主義国家で行きにくいところでした。
そして本日やってきたのは、東西冷戦も終結し行き来が自由になったブタペスト東駅です。
ところが駅の雰囲気がちょっと違うのです。
ハンガリーの首都の割には、いやに静か過ぎるのです。
いくら今日が独立記念日で休日、それも朝の8時とはいえ、やはり寂しいのです。
改めて時刻表を見ると、どうも1つ前の駅で降りてしまったみたいです。
幸いブタペスト南駅行きの列車が5分後にあったので、飛び乗り事なきを得ました。

 そして、南駅までは1駅。
電車に乗込むと、5分ほどで着いたのでした。
ここから近いのは王宮です。
予定を変更して、王宮を先に巡ることにしました。

ウィーン門から入れば、城壁の中は独特の雰囲気を持った町です。
そしてその王宮の中央には、ひときわ高い塔とその横にはカラフルな屋根を持ったマーチャーシュ教会があります。
13世紀にベーラ4世によって作られたこの教会は、15世紀にマーチャーシュ王によって増築されて、今の名前になっています。

 マーチャーシュ教会の横には、城壁に沿うように「漁夫の砦」と呼ばれる白い石灰石でできたこの建物があります。
ロマネスク様式で造られた真っ白な砦は、実に美しいものです。
このころには朝の失敗をすっかり忘れてしまっていました。
そしてここからドナウ川、そして対岸の国会議事堂が一望できます。

 城壁の中は実際に住居が立ち並ぶ町で、ここにハンガリーが誇る陶器「ヘレンド」の直営店もここにあります。
鮮やかでさりげない模様は、見る者を魅了します。
ドイツの「マイセン」ほどはいかないにしても、1客ン万円の値段がかろうじて購入意欲を思いとどまらせてくれました。

 「漁夫の砦」から5分ぐらい歩いたところに、地下王宮の入り口があります。
王宮の地下に作られたもう一つの世界です。
ほんのり灯る明かりを頼りに、地下を廻ります。
入り口で地図は渡されるのですが、自分の居場所がわかりにくく、今ひとつ役には立ちません。
ワインが湧き出ている泉があったり、部屋の真ん中に3mほどもある顔が埋まっていたりで、ちょっとドキドキさせられる洞窟の旅です。

 王宮内には、そのほかにも露店が集まった場所があり、ここでは所狭しと小さな店が出ています。
日本のこけしのようでちょっと太目の人形や、刺繍の施されたテーブルクロスなど、いわゆる土産物も売っていましたが、どこも高い値段がついていました。

 王宮を出てドナウ川の方向に向かうと、そこに架かっているのが有名な「くさり橋」です。
ブタとペストの両方の町を始めて結んだ橋なのです。
オーストリア戦争のときにはオーストリアのハプスブルグ家の軍隊が橋を壊すと脅かし、それ以降負けたハンガリーがオーストリアの絶対王政のもとに支配される悲しい歴史や、第二次世界大戦ではナチスドイツがこの端を破壊したり、ハンガリー動乱ではソ連が渡って来たりの歴史が刻まれた橋なのです。
そしてドナウ川には数隻の大きな観光船が並んでいました。
つい最近、ドイツのドレスデンでエルベ川下りをしてきたところですし、オーストリアのレーゲンスブルグでは同じドナウ川を眺めたこともあるので、観光船に乗り込みことは今回は見送りました。

 さて橋を渡りきり、繁華街であるヴァーツィ通りでハンガリー料理の食事です。
グラーシュ(牛肉のシチューでパプリカがきいたもの)のスープから始まり、チキンのクリームソースがけ、それに砂糖がかかった生クリームたっぷりのクレープは上品な味でした。
食事を終えたあとは、腹ごなしで聖イシュトヴァーン大聖堂まで歩きます。
王宮からペストの町を見下ろした時に見れるのが、これから行く国会議事堂とこの大聖堂だったのです。
直径22m、高さ96mのドームは周囲を圧倒させます。

 

 さらに歩いたところには、国会議事堂があります。
対岸から見た屋根のゴツゴツした姿とは違い、陸から見た姿は上品なきれいな建物です。
特に今日はハンガリーの休日のため、国旗できれいに飾られていました。
そばでは衛兵がきびきびとした動きで、パフォーマンス兼警備を行っていました。

 さていい加減に歩き疲れての行き先は、地下鉄でモスクワ広場に出て、そこからトラム、そして登山電車に乗り継いだところに、子供鉄道の駅があります。
子供鉄道とはブタ側のヤノーシュ山を走る電車で、運転手と駅長以外は、駅員も乗務員もすべて子供で構成されている鉄道です。
軌道は狭いが、りっぱな鉄道です。
社会主義時代に作られたこの組織が、今もそのまま運営され続けています。
広軌道の線路を見慣れているヨーロッパで、狭起動よりさらに一回り狭い線路の幅は、おもちゃのようです。
この日は時間も遅く、終点の駅まで行くことなく、途中で帰りの最終電車に乗り換えて帰ってきたのでした。

 翌日は、朝から地下鉄に乗って「英雄広場」まで行きます。
ハンガリーを代表する7人の部族長の銅像が、立ち並んでいます。
その裏にはヴァイダフニャド城があり、その庭はスケート場になっていました。
この辺からは緑豊かな市民公園です。
その中にある農業博物館は城の跡を利用したもので、どっしりした造りが美しい建物です。
博物館には入らなかったものの、その横の土産物屋で面白いワインを見つけました。
もともとハンガリーはワインが盛んに飲まれますが、ここにおいてあるのは赤ワインの中に別のボトルが複雑に入り組んでいて、そこには城ワインが。
そして私が買ったのは、それとは違い赤ワインのボトルの中に帆船が泳いでいるもの。
飲むのは惜しいので、日本に帰っても飾って眺めることでしょう。

 さていよいよ今回の旅も終わりに近づきます。
帰りのブタペスト東駅では、警官が寄ってきてパスポートを見せろと要求してきました。
よくあるにせ警官ではないかと警戒はしたものの、結局はパスポートを提示。
警官はパスポートを右に左に傾けながら、写真の貼り目を入念に見ていました。
どう見ても日本人の私なのですが、それでも偽造パスポートを使う者が多いのでしょうか。
トラブルに巻き込まれることもなく、東欧のハンガリーの旅は無事に幕を閉じました。

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