[旅の日記]
ヘルシンキ Helsinki 
今回は、フィンランドの旅です。
前からあこがれていた北欧です。
日本から10時間の飛行機で、ヘルシンキに到着します。
ヘルシンキ空港では、ムーミンカフェが出迎えてくれます。
そうです。フィンランドで有名なものといえば、サンタクロースそしてムーミンです。
ムーミン、ノンノン、スナフキン、ミーがカフェの中央に勢揃いしています。
北欧感がいっぱいの空港からは、電車で市内に移動します。
その前に乗り物用のディチケットを入手しなければなりません。
ディチケットは区間毎、日数毎に設定ができ、空港のあるC地区からヘルシンキ市内のA地区までを網羅するA,B,C区間を4日間のチケットを購入します。
インフォメーションで尋ねると、Kioskiを指示されました。
すぐそばのKioskiで購入し、これでトラムに乗るときの発券機探しの心配が不要となります。
実はフィンランド国鉄の駅の自動発券機でも帰るのですがピラピラのレシートのため、Kioskiでカード状のものを手に入れたのです。
なくさないためにも、しっかりしたカードが便利です。

ヘルシンキ中心街へは、電車で移動します。
ヘルシンキ中央駅 Helsingin rautatieasema~空港駅 Helsinki-Vantaan lentoasema間はリング・レース・ラインが輪っか状に電車が走っており、P線とI線のどちらに乗ってもほぼ同じ30分で到着します。
それでは、P,Iの先に来た方に乗り込みます。
気を付けなければならないのは、最初に乗るときにディカードのアクティベートを行わなければなりません。
車両のドアに取りつけられているカード読み取り装置に軽く当てるだけですが、これを行わないと無賃乗車になってしまいます。
空港駅もヘルシンキ中央駅も終着駅ですので、降り忘れの心配はありません。
ヘルシンキ中央駅はフィンランドの首都の駅だけあって、多くのホームが集まっています。
日本と違うのは改札口がないことで、電車を降りると直接駅舎に向かうことができます。
天井の高い歴史を感じる駅舎で、上から吊るされたシャンデリアが豪華さを感じます。
まずは荷物をホテルに預けに行きましょう。
ホテルのあるハカニエミ Hakaniemiへは、地下鉄でもトラムの3,6,7,9線のいずれに乗っても行くことができる便利な場所です。
位置関係を把握するために、市内を見渡せるトラムで移動することにします。
ホテルでは時間が早かったのですがチェックインすることができ、幸運にも部屋に荷物を入れることができました。
それでは、近所を散策することにしましょう。
ハカニエミのトラム電停から見えたのは、坂の上の高い塔です。
気になったので行ってみることにします。
そこは「ルーテル教会 Kallion kirkko」で、教会の中にはカフェも併設されています。
ここから再びハカニエミ電停に戻ります。
右手に湖のようなものが見えますので、行ってみましょう。
実はこの水は海からつながっているマリーナ Eläintarhanlahden venesatamaで、水上レストランや噴水が湖畔の散歩に最適な景観を作っています。
よく見るとホテルの裏手に位置するのです。
そういえばチェックイン時に「マーケット側か湖側かどちらの部屋が良い?」と聞かれたのは、このことだったのですね。
朝が早い日があるので、トラムと人の動きが判るようにマーケット側を希望したのですが、こういう選択肢もあったことに気付いたのでした。
それではマーケットに足を運びましょう。
ハカニエミ市場 Hakaniemen kauppahalliは、映画「かもめ食堂」の舞台ともなり日本人が訪れることも多くなったところです。
歴史あるレンガ造りの建物は2年前から工事に掛かっており、まだいまでも建物全体をシートが覆った状態です。
その代わりに近くに新しい売り場が造られていました。
小エビが山のように乗ったサンドイッチも、売られています。
近所をブラブラした後、この日の夕食はビュッフェ形式で地元のものを食べられるレストランに予約をしたのでした。
レストランへはトラムで向かいます。
ここで食べたかったのは、ラップランド名物であるポロンカリストュス poronkäristysです。
判りやすく言えば、トナカイ肉の煮込みです。
これにマッシュポテトを添えて食べます。
肉の調理方法によって3種類のトナカイ肉が準備されています。
その他にもサーモンやタラといった北欧定番の魚料理が並んでいます。
もちろんフィンランドビールとともに、胃袋を満たしてくれたのでした。
ホテルに帰ると、面白いものがありました。
シャワーだけでバスタブのある部屋が少ないヨーロッパですが、その代わりにサウナがあります。
焼けた石に水をかけて、室温を調整します。
ジュッと水が一瞬にして蒸発する様を楽しんでいると、室内は蒸気まみれの高温になってしまいます。
結局滞在中にサウナ室で人と出会うことはなく、会話に怯えることもなくゆっくりとサウナを楽しむことができたのでした。
翌日はヘルシンキ中央駅まで地下鉄体験をしてみます。
車両は綺麗で構内も明るく、ローマの地下鉄に較べると格段に治安が良いです。
トラムのつもりで3駅目と決めつけて乗っていると、行き過ぎてしまいました。
ここからはトラムに乗り換え、「ヘルシンキ大聖堂 Helsingin tuomiokirkko」を訪れます。
「ヘルシンキ大聖堂」はヘルシンキ1番の名所とだけあって、観光客でいっぱいです。
広い石段を上って行くと、白が眩しい大聖堂がそびえ立っています。
1917年のフィンランドの独立までは「聖ニコラウス教会」と呼ばれていたものですが、独立後にカール・エンゲルによってネオクラシック様式に改築されました。
屋根には12使徒の彫刻があり、この真鍮彫刻は世界最大のものです。
そして「ヘルシンキ大聖堂」から見下ろす御影石が敷き詰められた広場が、「元老院広場 Senaatintori」です。
大聖堂と市庁舎に挟まれた6,500平方メートルの空間です。
広場の中央部には、フィンランドの国会を再建したことを記念して建てられたアレクサンドル2世の像が建っています。

ここからは周りの景色を眺めながら、「ウスペンスキー寺院 Uspenskin katedraali」を目指します。
日本名は「生神女就寝大聖堂」という難しいものですが、正教会の大聖堂です。
ロシア帝国の建築家 アレクセイ・ゴルノスターエフによって設計されたもので、1868年にヘルシンキ市街を一望できるカタヤノッカ半島の高台に建立されました。
大きな岩が残る丘陵地で、強固な岩の地盤を利用して建てられました。
寺院は、茶褐色の壁と緑青の屋根が美しい建物です。
地下には、第2次世界大戦中にソ連軍の空爆からの避難所として掘削されたた防空壕が残っているということです。
実はこの日は時間に間に合わずに中に入ることができず、翌日に再び訪れることになるのですがこの日は閉館日で、結局外観だけの観光になってしまいました。
実はGoogle Streetを見ていて、このカタヤノッカ地区で訪れてみたいところがありました。
何の建物なのかは不明ですが、煉瓦造りの建物の4方に飛び出た丸い屋根のドームが、なぜか脳裏から離れません。
「ウスペンスキー寺院」を出てトラム沿いに歩いていると、いとも簡単にその建物を発見することができました。
重厚な造りは、威厳すら感じます。
ここからはエテラ港にある「マーケット広場 Kauppatori」に向かいます。
途中でプールが見えます。
寒くオーバーを着込んでいるこの時期に、水着になっている人がいます。
よく見るとサウナを備えた施設で、ほてった身体をプールで冷ますためのものだったのです。
「マーケット広場」では、テントを張った多くの店が出ています。
野菜や果物、魚などの食べ物が多く、豪快にもサーモン1匹を丸ごと鉄板で焼いています。
辺り一面に、良い匂いが漂っています。
その近くには「オールドマーケットホール Vanha kauppahalli」があるということなので、行ってみます。
区画で区切られた店が、所狭しと並んでいます。
焼いた魚を無造作にショーケースに入れ、売っている店があります。
またトナカイ肉をパンに挟んだサンドイッチもあります。
値札にトナカイの絵が描かれているのは、我々のようなフィンランド語を理解できない観光客への配慮でしょうか。
港だけあってここで扱う食材は魚が中心のようです。
サーモンスープの美味しい店があると聞いていたのですが、歩きながら見たものをすぐ口に入れる生活をしているのでお腹が膨れてこれ以上は入りません。
残念です。
ここ近くにムーミンの作者である「トーベ・ヤンソンのアトリエ Tove Janssonin koti ja ateljee」があると聞いて、そちらに向かうことにします。
2番トラムと10番トラムのちょうど中間あたりの中途半端な場所なので、歩いて行きます。
「トーベ・ヤンソンのアトリエ」に着くまでの間に、大きな教会があります。
「ドイツ教会 Saksalainen kirkko」です。
そこで角を曲がります。
これまたレンガ造りの大きな建物があり、その横には「フィンランド建築博物館 Arkkitehtuurimuseo」が見えます。
「トーベ・ヤンソンのアトリエ」は、その向かいのビルです。
1914年に彫刻家の父ヴィクトル・ヤンソンと画家の母シグネ・ハンマルステン・ヤンソンの長女として生まれたトーベ・ヤンソンは、絵に興味を持ち始め15歳で政治風刺を中心とする雑誌「ガルム」の挿絵を担当します。
その後ストックホルムの工芸専門学校、ヘルシンキの芸術大学、パリの美術学校などへ通い、本格的に絵の勉強に励みます。
代表的なキャラクターのムーミン・トロールは、1945年に小説としての「ムーミン」として登場します。
しかし「ガルム」への「ムーミン」の挿絵は、1944年に既に行われていたようです。
グラフィックアーティストのトゥーリッキ・ピエティラと結婚し、彼はムーミン谷博物館に納められた数多くのムーミンフィギュアやムーミン屋敷の制作でも知られています。
トーベ・ヤンソンは2001年の生涯を閉じるまでこのアトリエを利用し、世界中にムーミンが知られた功績を記念し入口の外壁には彼女のレリーフが飾られています。
「トーベ・ヤンソンのアトリエ」の傍には「デザイン美術館 Designmuseo」もあり、ヘルシンキの芸術がこの辺りに凝縮しています。

ここからトラムに乗るのですが、これまた気になる2本の尖がり帽子が見えます。
すぐそばのようですので、ちょっと寄ってみます。
「聖ヨハネス教会 Johanneksenkirkko」は、2600人を収容できるフィンランド最大規模の石造教会です。
遠くから見えていた2本の塔は、高さ74mもあるものです。
どうりで市内のどこにいても見えていたはずです。

ここからはトラムで移動します。
次に向かったのは、「テンペリアウキオ教会 Temppeliaukion kirkko」です。
ヘルシンキの案内には必ずと言ってよいほど出てくるところです。
フィンランド福音ルター派教会に属しているキリスト教会で、スオマライネン兄弟により設計されたものです。
大岩をくりぬいた中に造られていることが特徴的です。
天井は中央が丸く、その周りのガラスがはめ込まれたところから自然光を採り入れる構造になっています。
近代的な教会で、教会に付き物の鐘がありません。
鐘の代わりに、作曲家タネリ・クーシストによって作られた鐘の音がスピーカーから流されます。
そして本日最後の訪問先は、「シベリウス公園 Sibeliuksen puisto」です。
再びトラムで移動し近くの駅で降りて歩くこと10分余り、公園に辿り着きました。
ここにモニュメントがあるはずです。
探していると老人が近寄って来て、「手を貸そうか」と言ってくれます。
思わずガイドブックを示し、公園内にあると思われるモニュメントを見せたのです。
しばらく考えた挙句「見たことがない」と言われてしまいました。
こうなると公園内を足で回って、自力で探すしかありません。
実は同じ公園内ですがこの場所から1筋だけ海側に、目的のモニュメントを見つけることができたのでした。
御影石の上の作曲家ジャン・シベリウスの肖像、そして岩盤の上に配置されたモニュメントです。
「シベリウスモニュメント Sibelius-monumentti」とよばれるもので、パイプを吊るした樹木の中に入ると独特の世界に引き込まれたようになります。
面白いものです。
その横には海の砂浜が広がっています。
公園を後にトラムのりばに向かうと、これまた面白いものを見つけました。
そこには、トラムの車庫があるのです。
電車の操作場のように線路が敷かれた広場にトラムが並んで置かれるのかと思っていましたが、ここでは1路線ごとに車庫があるのです。
引込線が車庫の数だけ枝分かれし、おまけに車庫ごとに扉が付いているのです。
なんとまあ、過保護なトラムだこと。
そして今日の夕食は、予約しておいたちょっと高級そうなレストランです。
「ロールキャベツ Kasviskääryleet」は日本のようなキャベツで巻いたミンチ肉を煮込むのではなく、シロップをつけてオーブンで焼き上げるのです。
それに赤いジャムとともに食べます。
また「ニシンのフライ Paistetut silakat」は、メニューを見た時には魚の大きな切り身を想像していたのですが、出てきたのは多くの小魚です。
ウエイトレスに改めて確認しますが、「これがニシン」と言い張ります。
確かに味はニシンで、骨は柔らかく残さず食べることができます。
今回もまた美味しい食事にあり付けたのでした。
旅の写真館(1)