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[旅の日記]

九份 九份 

 台湾の中でどこに行きたいかと聞かれたときに、最初に思い浮かぶのが九份です。
千と千尋の神隠しの舞台なような街です。
ガイドツアーや台北からのバス旅行は手軽や安いものもあります。
しかし現地をを知るために、できるだけ現地人の日常生活に即した形で旅をするのがもっとうです。
ということで今回も移動の手段に選んだのは電車です。

 台湾国鉄の台北駅は様々な都市に向かう電車が集まっています。
目的の電車を待っている間も、日本の特急である自強号が次々と入ってきます。
奥のホームには台湾新幹線が停まっているもの見えます。
ここから台湾国鉄の区間車(各駅停車)に乗り、瑞芳駅を目指します。
時間は朝のラッシュで、人に揉まれながらも列車は発車します。
窓の外からは、大都会台北にそびえ立つマンションが目に入ってきます。
20分も走れば次第に混み方もましになり、やがては車内には自分以外に1組の客しかいない状態です。

 1時間ほど経ったころに、瑞芳駅に着きました。
駅前からバスに乗るのですが、バス停が見当たりません。
聞くと丁寧に日本語で教えてくれました。
それによれば、駅から少し歩いたところにバスの発着所があるそうで、ポスターに書かれているバスの番号を写真を撮っていけと言われました。
バス停に着くと同時にバスがやってきました。
「九份老街(ジォウフェンラオジエ)」が本日の目的地ですが、その先の「金瓜石(ジングァスー)」まで乗って行きます。

 「金瓜石」は名前の通り、その昔金の採掘口があったところです。
九份を含めこの地域は、金で潤った町なのです。
金瓜石でバスを降り、そこにある「黄金博物館」を訪れてみます。
年代物のバスが停まってい横を通り、博物館に入っていきます。
博物館といっても、広い敷地の中に金にまつわる展示と採掘口が残されています。
まず現れるのが「四連棟」です。
ここは日本式の木造宿舎で、1930年代の日本統治時代には日本人職員の宿舎だったところです。
居間の他に独立した風呂場と台所そして床の間がある4軒続きの長屋です。
ここでは20人程の日本人が暮らしていました。
統治時代が終わってからは台湾人が生活していたのですが、丁寧に使われていたのか今でもそのままの姿で残っています。

 その先にあるのは派出所と郵便局です。
木造の建物が、周りの景観に合致しています。
さらに先を進みます。
そこには山にぽっかり空いた穴があり、奥まで線路が入っています。
第5坑道で、入り口脇にはトロッコが飾られています。
ここは坑道を歩いて進むツアーがあるようですが、訪れた時には開催されていませんでした。

 博物館の敷地内には金を作る工程を説明する錬金楼、鉱石や製錬された金が展示されている黄金館、気象や地質を説明する大地館などの多くの建物があります。
特に目を引いたのが金の塊、それに重くて移動することすらできない金の延べ棒です。

 「黄金博物館」を後にして、バスで「九份老街」まで10分ほど戻ります。
坂道を降りて、下に「九彬霞海城隍廟」の屋根が見えたところが「九份老街」のバス停です。
「九份老街」に着いた時には朝の空いた列車が嘘のように、人でごった返していました。
なるほど普通の人は観光バスで来るのだと、改めて認識した瞬間でした。
「九份老街」は坂の途中に狭い通路が張り巡らされた街で、「軽便路」と名がついた通路の両側にはびっしりと店が並んでいます。
そのほとんどが食べ物屋で、ここで買った食べ物を片手に街を見て回ります。
北京ダックでしょうか、鴨か鶏が丸焼きにされています。
通りを何回も行き来して見るたびに、次第に皮が茶色みを帯びてき焼きあがっていくのが判ります。
別の店ではどこからか臭気が漂ってきます。
見ると「くさい豆腐」が売られているではありませんか。
美味しいのかもしれませんが、どうしてもこの匂いには慣れることができません。

 そうしているうちに辿り着いたのが、「豎崎路」と呼ばれる階段です。
坂にへばりつくようにある「九份老街」を上下で結ぶ通路です。
道に沿って提灯が並び、台湾の趣がある場所です。
ここにある「阿妹茶樓(アーメイチャーロウ)」でお茶をすることにします。
たっぷりの湯で茶器を温め、ウーロン茶を小さな急須で何回にも分けて飲むのです。
茶葉は干す過程で丸められており、急須にはわずかの茶葉しか入れていないのに、お茶を入れると急須いっぱいに膨れます。
5杯も飲むと茶葉を入れ替えまた飲む、この繰り返しです。
茶菓子としてはゴマを固めたもの、梅干しを乾燥させたもの、きなこもち、干菓子がついてきます。
小さな急須で手間をかけてお茶を作るといった、ゆったりとした時間が流れます。

 時間の流れを楽しんだ後は、「豎崎路」の階段を上まで登っていきます。
一番上まで登り切ったところにあるのが、「阿柑姨芋圓(アーガンュイーユェン)」という店です。
おしることいったところでしょうか、甘めの汁の中に餅と小豆そして豆類が入ったスイーツです。
店の入り口では突きたての餅を一口大に切っています。
ここでも「九份老街」の下を眺める席に座り、景色を楽しみます。
へとへとになって登ってきた階段の疲れを癒します。

 さて一通り楽しんだ後は迷路のような「軽便路」を通り、バス停まで戻ります。
上りと下りのバス停が離れており、探すのに苦労しました。
そこから再びバスに揺られて着いた瑞芳駅ですが、来た時とは景色が変わっていました。
降りて判ったのですがバスは行きと帰りで1本違った通りを走っていたのです。
さらには瑞芳の街に人手があり活気ついて、朝とは違いまったく違った風景になっていました。

 ここから台北までは、台湾国鉄に乗って帰ります。
駅には一昔前の列車がやってきました。
ここからまた1時間の列車の旅です。
金で栄えた九份の街を巡った1日だったのでした。

 
   
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